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介護保険の住宅改修の申請の流れ7ステップ|着工前にやることを時系列で
介護保険の住宅改修でもっとも多い失敗は、工事の内容ではなく手続きの順番です。
「先に工事を終わらせて、あとから領収書を出せばいい」と考えてしまうと、支給を受けられません。介護保険の住宅改修は、工事を始める前に市区町村へ申請し、承認を受けることが絶対条件だからです。
ここでは、相談から入金までの流れを7段階に分けて整理します。
全体の流れと期間の目安
図:申請から支給までの7ステップ(全体像)
| ステップ | やること | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1 | ケアマネジャーに相談 | 即日〜数日 |
| 2 | 施工業者の選定・現地調査 | 1〜2週間 |
| 3 | 見積書の取得・比較 | 1〜2週間 |
| 4 | 事前申請(着工前) | 提出から1〜2週間で結果 |
| 5 | 工事の実施 | 1日〜1週間 |
| 6 | 事後申請(完了報告) | 工事完了後すみやかに |
| 7 | 住宅改修費の支給 | 申請から1〜2か月 |
相談から入金まで、全体で2〜3か月かかると見ておくと無理がありません。
ステップ1:ケアマネジャーに相談する
まず担当のケアマネジャー(居宅介護支援事業所の介護支援専門員)に相談します。要支援の方は地域包括支援センターが窓口です。
ここが起点になる理由は、事前申請に必要な書類のひとつ「住宅改修が必要な理由書」を作成できるのが、原則としてケアマネジャー等に限られているからです。
理由書には、現在の身体状況、住宅のどこで何に困っているか、その工事によって何が改善されるかを記載します。この記述が弱いと、対象工事であっても承認されないことがあります。家族の側から見て何を伝えればよいかは理由書の記事で整理しています。
「ケアマネジャー等」の範囲は、自治体によって正反対になります。 105自治体を調べたところ、認められる資格の幅にはっきりした差がありました(作成者の要件を公式サイトで確認できたのは95自治体です)。
| 自治体 | 認められている作成者 |
|---|---|
| 岡山市 | ケアマネジャー・地域包括支援センター職員・作業療法士・理学療法士・福祉住環境コーディネーター2級以上・医師・増改築相談員・マンションリフォームマネジャー・建築士(ホームヘルパー2級以上の修了者) |
| 堺市 | 担当ケアマネジャー中心。建築士は不可 |
| 足立区 | 福祉住環境コーディネーター2級以上・増改築相談員・マンションリフォームマネジャー・作業療法士・理学療法士・地域包括支援センター職員 |
| 板橋区 | ケアマネジャーとおとしより相談センター職員の2者のみ |
| 品川区 | 「担当」ケアマネジャーと限定 |
| 熊本市 | 資格に加えて事前に市へ「理由書作成者」として登録が必要 |
業者が「うちの建築士が理由書を書けます」と言っても、自治体によっては通りません。 逆に目黒区と荒川区は、理由書の作成費に区の助成制度を設けています。お住まいの自治体の扱いは申請期限と書類の名義要件(105自治体)、または自治体別のページでご確認ください。
ケアマネジャーがまだ決まっていない場合は、先に市区町村の介護保険窓口か地域包括支援センターに連絡してください。要介護認定を受けていない場合は、認定申請から始める必要があります。認定には申請から30日程度かかります。
相談時に伝えると話が早いこと
- どの動作で困っているか(例:夜トイレに行くときにふらつく)
- いつまでに工事を終えたいか(退院日など)
- 予算の上限があるか
- 賃貸か持ち家か
ステップ2:施工業者を選び、現地調査を受ける
介護保険の住宅改修では、施工業者に指定や登録の制度がない市区町村が大半です(一部、独自に登録制を設けている自治体があります)。つまり、原則としてどの業者に依頼しても構いません。
ただし、実務上は次の条件を満たす業者を選ぶほうが安全です。
- 介護保険の住宅改修の申請書類作成に慣れていること
- 見積書を、対象工事と対象外工事に分けて出せること
- 工事前・工事後の写真撮影の要件を理解していること
現地調査には、可能であればケアマネジャーにも立ち会ってもらいます。身体状況を知っている人が現場を見ることで、手すりの高さや位置の判断が的確になります。
業者を比較する具体的な基準は業者選びの記事で5点にまとめています。
ステップ3:見積書を取得して比較する
見積書は、必ず複数社から取ってください。事前申請の承認には1〜2週間かかるため、相見積もりを取る時間は制度上あらかじめ確保されています。
見積書で確認すべき点は次のとおりです。
- 工事箇所ごとに単価と数量が分かれているか(一式表記だけになっていないか)
- 介護保険の対象工事と対象外工事が区別されているか
- 下地補強などの付帯工事が明記されているか
- 諸経費・出張費の扱いが明確か
「一式 18万円」のような見積書は、20万円の枠内に収めるために逆算しただけの可能性があります。内訳を出せない業者は避けたほうが無難です。
ステップ4:事前申請(ここが最重要)
工事を始める前に、市区町村の介護保険窓口へ申請します。一般的に必要な書類は次のとおりです。
図:ここを間違えると支給されない ── 正しい順番と、やってしまいがちな順番
| 書類 | 用意する人 |
|---|---|
| 住宅改修費支給申請書 | 本人または家族 |
| 住宅改修が必要な理由書 | ケアマネジャー等 |
| 工事費見積書 | 施工業者 |
| 改修前の状態がわかる写真(日付入り) | 施工業者 |
| 改修後の完成予定の状態がわかる図面 | 施工業者 |
| 住宅の所有者の承諾書(本人所有でない場合) | 所有者 |
※必要書類は市区町村によって異なります。必ず窓口で確認してください。
「着工の何日前までに出せばよいか」は、ほとんどの自治体が公表していません。 105自治体を調べたところ、日数を数字で明記していたのは9自治体だけでした。もっとも早いのが岡山市の「着工予定日の14開庁日前まで」、もっとも遅いのが仙台市・福岡市の「3営業日前まで」で、4倍以上の開きがあります。日数を書いていない自治体でも審査に1〜2週間かかる案内が並んでいるので、実務的な目安は「着工の2週間前」です。自治体ごとの実測は申請期限と書類の名義要件(105自治体)をご覧ください。
申請から結果の通知までは1〜2週間程度が目安です。ここで承認が下りるまでは、絶対に工事を始めないでください。
退院日から逆算するスケジュール
退院日が決まっている場合、逆算するとこうなります。
図:退院日から逆算した、余裕のあるスケジュール
| 退院日までの日数 | やっておくこと |
|---|---|
| 60日前 | ケアマネジャーに相談。認定がなければ認定申請 |
| 45日前 | 業者選定・現地調査 |
| 35日前 | 見積もり取得・比較 |
| 30日前 | 事前申請を提出 |
| 15日前 | 承認・着工 |
| 10日前 | 工事完了・完了報告 |
認定を受けていない場合は、さらに30日程度前倒しが必要です。入院が決まった時点で動き始めるのが安全です。
ステップ5:工事の実施
承認後に着工します。工事内容は、申請した内容と一致している必要があります。
現場で「ついでにここも」と追加工事をしてしまうと、その部分は申請していないため対象外になります。追加が必要になった場合は、着工前に変更申請ができるか窓口に相談してください。
工事後の写真も、申請に必要です。施工業者に撮影を依頼しておきます。
ステップ6:事後申請(完了報告)
工事が完了したら、次の書類を提出します。
- 住宅改修に要した費用の領収書
- 工事費の内訳書
- 改修後の状態がわかる写真(日付入り)
- 住宅改修完了報告書
領収書は原本が必要な自治体が多いので、業者から受け取ったら保管しておいてください。
宛名は被保険者本人の名前でなければなりません。 支払うのが家族でも、業者に依頼して本人名義で発行してもらう必要があります。川崎市は「名字のみや上様等は不可」、新宿区は「姓のみや家族名の領収証は不可」、岡山市は「本人の名義以外は支給対象外」と明記しています。原本が返ってくるかどうかも自治体で分かれます(原本とコピーの両方を出せば返す自治体、写しでも可の自治体、返却の記載がない自治体)。確定申告などで原本が必要なら、窓口に行く前にコピーを取っておいてください。詳細は申請期限と書類の名義要件(105自治体)にまとめています。
ステップ7:住宅改修費の支給
書類が受理され、内容が確認されると支給が決定します。入金までは申請から1〜2か月が目安です。
図:支払い方法によって、用意する現金が変わる
東京23区については、全区の対応状況を1件ずつ確認して受領委任払い対応状況の一覧にまとめました。制度の名称が区によって6通りに分かれているため、「受領委任払い」という語で自区のサイトを検索しても見つからないことがあります。
支払い方法には2つの方式があります。
償還払い(一般的な方式)
2つの方式の違い、自分の自治体が対応しているかの調べ方は償還払いと受領委任払いの記事で詳しく解説しています。
利用者がいったん工事費の全額を業者に支払い、後日、保険給付分が口座に振り込まれる方式です。多くの市区町村がこちらを標準としています。
一時的とはいえ全額を立て替える必要があるため、20万円の工事なら20万円を先に用意することになります。
受領委任払い(対応している自治体のみ)
利用者は自己負担分(1〜3割)だけを業者に支払い、残りは市区町村から業者へ直接支払われる方式です。立て替えが不要になるため負担が軽くなります。
ただし、この方式に対応している業者として市区町村に登録された業者に依頼することが条件になる場合があります。利用したい場合は、事前に窓口と業者の両方に確認してください。
手続きでつまずきやすい7つのポイント
| つまずき | 対策 |
|---|---|
| 着工前申請を忘れる | 最多の失敗。承認通知を見るまで着工しない |
| 要介護認定が下りる前に工事する | 認定申請中の事前申請可否を窓口に確認。非該当なら対象外 |
| 申請内容と違う工事をする | 現場での追加・変更は着工前に相談 |
| 改修前の写真を撮り忘れる | 工事後には撮れない。業者に事前依頼 |
| 賃貸で所有者の承諾を得ていない | 承諾書がないと申請できない |
| 領収書を紛失する | 原本が必要。受け取ったらすぐ保管 |
| 対象外工事が混ざっていた | 事前に見積書で対象・対象外を区別してもらう |
図:提出前チェック ── ここで止まる人が多い
対象外になる工事の詳細はこちらの記事で7分類にまとめています。
必要書類の一覧と、誰が用意するか
事前申請でつまずく原因の多くは、「誰が用意する書類なのか」が分からないまま時間が過ぎることです。役割を先に整理しておくと、待ち時間が減ります。
図:自分でやることと、人に頼むことを分ける
| 書類 | 用意する人 | 補足 |
|---|---|---|
| 支給申請書 | 本人・家族 | 市区町村の窓口またはWebで入手 |
| 住宅改修が必要な理由書 | ケアマネジャー等 | 作成できる資格者が定められている |
| 工事見積書 | 施工業者 | 対象工事と対象外工事を分けて記載 |
| 改修前の写真(日付入り) | 施工業者または家族 | 撮影日が分かる状態で |
| 住宅の平面図・改修箇所の図面 | 施工業者 | 手書きでも可の自治体が多い |
| 所有者の承諾書 | 本人・家族(所有者の署名) | 賃貸・所有者が本人でない場合 |
| 介護保険被保険者証の写し | 本人・家族 | 住所が工事する住宅と一致しているか確認 |
| 介護保険負担割合証の写し | 本人・家族 | 自己負担割合の確認に使う |
このうちもっとも時間がかかるのが理由書です。ケアマネジャーは複数の利用者を担当しているため、依頼してから受け取るまで数日から1週間程度かかることがあります。相談の初回に「理由書をお願いします」と伝えておくと、並行して進められます。
写真は、改修する場所が特定できるように引きの写真と寄りの写真の両方を撮っておくと安全です。工事後にも同じ角度で撮影するため、撮影位置を覚えておいてください。
差し戻しの典型例と、遅れる日数
書類の不備で差し戻されると、修正して再提出するまでにおおむね1週間前後の遅れが出ます。よくある差し戻し理由は次のとおりです。
| 差し戻しの理由 | 修正にかかる目安 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 見積書に対象外工事が混ざったまま | 3〜5日 | 業者に小計を分けて出し直してもらう |
| 「一式」表記で内訳が不明 | 3〜5日 | 数量と単価の記載を依頼する |
| 改修前の写真の撮影日が不明 | 1〜3日 | 日付が写る状態で撮り直す |
| 理由書の記載が具体的でない | 5〜7日 | ケアマネジャーに追記を依頼 |
| 被保険者証の住所と工事場所が不一致 | 解決に数週間 | 住民票の異動が必要な場合がある |
| 所有者の承諾書が未添付 | 3〜7日 | 所有者との連絡に時間がかかることも |
最後の2つは、修正では済まないことがある点に注意してください。とくに住所の不一致は、住民票の異動が必要になると1か月近くかかることもあります。相談の早い段階で被保険者証の住所を確認しておいてください。
差し戻しの間に工事を始めてはいけません。 「どうせ承認されるから」と着工すると、その時点で対象外が確定します。承認の通知を受け取るまでは、着工日を確定させないでください。
工事後にやることを忘れない
承認が下りて工事が終わると、そこで手続きが終わったつもりになりがちです。実際には事後申請(完了報告)を出して初めて支給されます。
図:工事が終わってからやること
| やること | 期限の目安 | 誰が |
|---|---|---|
| 改修後の写真を撮る | 工事完了直後 | 業者または家族 |
| 領収書を受け取る | 支払い時 | 本人・家族 |
| 工事内訳書を受け取る | 工事完了時 | 業者 |
| 事後申請を提出する | 自治体が定める期限内 | 本人・家族 |
| 支給額決定通知を受け取る | 提出から1か月前後 | ─ |
| 指定口座に入金される | 通知後、数週間 | ─ |
領収書は本人(被保険者)の名前で発行してもらうのが原則です。家族の名前で受け取ると、確認に時間がかかることがあります。
なお、事後申請の期限は自治体によって定められています。工事完了から一定期間を過ぎると受け付けられないことがあるため、工事が終わったらすぐに書類をそろえてください。
まとめ
介護保険の住宅改修は、「相談 → 見積もり → 事前申請 → 承認 → 工事 → 完了報告 → 支給」という順番が固定されています。この順番を守ることが、支給を受けるための最低条件です。
全体で2〜3か月かかるため、退院日から逆算して早めにケアマネジャーへ相談してください。認定を受けていない場合は、さらに30日程度の前倒しが必要です。
必要書類や受領委任払いの可否は市区町村ごとに異なりますので、詳細は必ずお住まいの市区町村の介護保険窓口にご確認ください。
よくある質問
申請から支給まで、全体でどれくらいかかりますか?
住宅改修が必要な理由書は誰が書きますか?
要介護認定を受けていなくても申請できますか?
償還払いと受領委任払いはどちらが良いですか?
工事中に追加工事が必要になったらどうすればよいですか?
改修前の写真は誰が撮りますか?
領収書はコピーでもよいですか?
この記事の作り方
- 制度の記述の確認日
- 2026年8月19日(厚生労働省の通知および下記の一次情報を参照)
- 横断して確認した自治体
- 23件の市区町村が公開する要綱・案内ページ。 運用が分かれる論点は「自治体によって判断が異なる」と明記し、断定を避けています。
- この記事で扱っていないこと
- 市区町村ごとの様式の記入例
- ケアマネジャーの選び方
- 立場
- 当サイトは施工を行いません。特定の業者を有利に扱う理由がないため、 工事を減らす選択肢(福祉用具・照明の改善など)も同じ比重で扱っています。 誤りのご指摘はお問い合わせから受け付け、修正時は更新日を改めます。
参考にした一次情報
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」
- 各市区町村が公開する居宅介護(介護予防)住宅改修費支給申請の手引き
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