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介護保険の住宅改修20万円でできること6種類|対象工事と支給の条件
介護保険の住宅改修は、どんな工事でも対象になるわけではありません。厚生労働大臣が定める告示により、対象となる工事は6種類に限定されています。
この6種類を正確に把握しておくと、「見積書に入っているこの工事は保険が使えるのか」という判断が自分でできるようになります。逆にここを曖昧にしたまま業者に任せると、申請が通らなかった部分が丸ごと自己負担になることがあります。
支給限度基準額20万円の仕組み
まず金額のルールを整理します。
図:「20万円が支給される」ではない。負担割合別の内訳
- 支給限度基準額は、要支援・要介護の認定を受けた人1人につき20万円
- 20万円は「住んでいる住宅」ごとに設定される(原則、生涯で1回分)
- 実際に支払われるのは、工事費のうち20万円までの部分から、自己負担割合(1割・2割・3割)を差し引いた額
- 20万円を超えた分は全額自己負担
20万円は「もらえる金額」ではない
もっとも多い誤解がここです。20万円は支給の計算対象になる上限額であって、現金で20万円受け取れるという意味ではありません。
| 工事費 | 自己負担割合 | 支給される額 | 自己負担の合計 |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 1割 | 9万円 | 1万円 |
| 15万円 | 1割 | 13.5万円 | 1.5万円 |
| 20万円 | 1割 | 18万円 | 2万円 |
| 20万円 | 2割 | 16万円 | 4万円 |
| 20万円 | 3割 | 14万円 | 6万円 |
| 30万円 | 1割 | 18万円 | 12万円 |
| 40万円 | 1割 | 18万円 | 22万円 |
30万円の工事をした場合、支給の計算対象は20万円までなので支給額は18万円で頭打ちです。超過した10万円は全額自己負担になり、合計12万円を負担することになります。
20万円のラインを超えるかどうかで、自己負担額の伸び方が変わることを押さえておいてください。
ただし、20万円を超えた分がすべて自己負担になるとは限りません。当サイトで105自治体を調べたところ、74自治体が介護保険とは別枠の住宅改修助成を持っていて、上限は0円から200万円まで開いていました。江戸川区は200万円、中央区は185.4万円、横浜市は120万円です。30自治体は介護保険との併用が可能と明記しています。詳しくは自治体独自の住宅改修助成の調査と介護保険20万円と自治体助成は併用できるかにまとめました。超えたときに何をどの順番で確認するかは20万円で足りないときの手順に整理しています。
分割して使える
20万円は一度に使い切る必要がなく、複数回に分けて申請できます。回数の制限もありません。
たとえば最初に8万円分の手すりを設置し、半年後に12万円分の段差解消をする、という使い方が可能です。身体状況は変化するため、いま困っている工事から段階的に使うほうが結果的に無駄が出にくくなります。
なお枠が再設定される条件については、20万円のリセットの記事で整理しています。
対象になる6種類の工事
図:介護保険の住宅改修で認められている6種類
1. 手すりの取り付け
廊下、便所、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などに、転倒予防・移動補助のために手すりを取り付ける工事です。
工事を伴うことが条件です。床に置くだけの据え置き型手すりや、突っ張り棒式のものは、住宅改修ではなく福祉用具貸与の扱いになります。
手すりの形状(縦・横・L字)に制限はなく、身体状況に合わせて選べます。費用は1か所あたり2万〜15万円が目安で、下地の状態によって大きく変わります。詳しくは手すり取り付けの記事にまとめています。
2. 段差の解消
居室、廊下、便所、浴室、玄関などの各室間の段差、および玄関から道路までの通路の段差を解消する工事です。
具体的には、敷居を低くする、スロープを設置する、浴室の床をかさ上げする、といった方法があります。
こちらも工事を伴うことが条件で、持ち運びできる据置式スロープは福祉用具貸与の扱いです。また、動力によって段差を解消する機器(昇降機・リフト・段差解消機)は対象外とされています。工法ごとの費用は段差解消の記事で比較しています。
3. 滑りの防止および移動の円滑化等のための床材の変更
居室の畳をフローリングやビニル系の床材に変更する、浴室の床を滑りにくいものに変更する、通路面を舗装する、といった工事です。
畳から畳への交換や、単に古くなった床を張り替えるだけの工事は該当しません。滑り防止や移動しやすさという目的が明確であることが求められます。
4. 引き戸等への扉の取り替え
開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える工事です。扉の撤去も含まれます。
あわせて行う場合は、ドアノブの変更(レバーハンドル化)や戸車の設置も対象になります。握力が落ちている場合、丸いノブは回せなくなるため、レバーハンドル化は効果の大きい工事です。
なお、引き戸への交換にあたって新たに扉を設置する場合、その工事費が引き戸への取り替えより高額になるときは、差額分が対象外として扱われることがあります。
5. 洋式便器等への便器の取り替え
和式便器を洋式便器に取り替える工事です。便器の位置や向きを変更する工事も含まれます。
すでに洋式の便器を、暖房便座や洗浄機能付きのものに交換する工事は対象外です。 「和式から洋式へ」という取り替えに該当しないためです。ここは誤解が非常に多いポイントなので注意してください。
立ち座りが難しい場合、便座の高さが原因のこともあります。この場合は補高便座(特定福祉用具販売)を乗せるだけで解決することがあり、工事より先に試す価値があります。詳しくはトイレの介護リフォームの記事で解説しています。
6. その他、1〜5の工事に付帯して必要となる工事
上記5種類の工事を行うために不可欠な工事が対象になります。
- 手すりを取り付けるための壁の下地補強
- 浴室の床をかさ上げしたことによる給排水設備の工事
- 段差解消に伴う転落防止柵の設置
- 床材変更のための下地の補修や根太の補強
- 扉の取り替えに伴う壁または柱の改修
この6番目があるおかげで、下地補強のような「準備工事」も保険の対象になります。 見積書で下地補強が別項目になっている場合は、本体工事と一緒に申請できるか業者に確認してください。
対象になる住宅の条件
工事の種類だけでなく、どの住宅を改修するかにも条件があります。
図:住宅と本人、それぞれの条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 介護保険被保険者証に記載されている住所の住宅のみ |
| 一時滞在先 | 家族の家に一時的に身を寄せている場合、その住宅は原則対象外 |
| 施設入所中・入院中 | 原則対象外(退所・退院が決まり、戻る予定が具体的なら認められる場合あり) |
| 賃貸住宅 | 所有者(大家)の承諾書が必要 |
| 新築・増築 | 対象外 |
住民票を移していない住宅は対象になりません。親の家を改修する場合、親の住民票がその住所にあることを確認してください。ここを見落として申請が通らないケースは実際にあります。
対象になる人の条件
介護度ごとに使えるもの(住宅改修と福祉用具の違い)は要介護度別に使えるもの一覧にまとめています。
- 要支援1・2、または要介護1〜5の認定を受けていること
- 在宅で生活していること(施設入所中・入院中でないこと)
要介護度による制限はなく、要支援1でも要介護5でも、支給限度基準額は同じ20万円です。福祉用具のように要介護度で使えるものが変わる、ということはありません。
まだ認定を受けていない場合は、認定申請から始める必要があります。認定には申請から30日程度かかるため、退院日が決まっている場合は早めに動いてください。
6種類に入っていても支給されない3つのケース
対象工事に該当していても、次の場合は支給されません。
図:6種類に該当していても却下されるパターン
1. 着工前の申請をしていない
もっとも多い失敗です。工事を始める前に市区町村へ申請し、承認を受けることが要件です。事後申請では原則として救済されません。
2. 申請内容と違う工事をした
現場で「ついでにここも」と追加工事をすると、その部分は申請していないため対象外になります。追加が必要になった場合は、着工前に変更申請ができるか窓口に相談してください。
3. 目的が「安全・移動」と説明できない
床材の変更が典型です。同じ張り替え工事でも、老朽化の補修なら対象外、滑り防止が目的なら対象になります。この目的を書面で説明するのが、ケアマネジャーが作成する「住宅改修が必要な理由書」の役割です。
手続きの全体像は申請の流れの記事で、対象外になる工事の詳細はこちらの記事でまとめています。
福祉用具との使い分け
「工事をしないと保険が使えない」わけではありません。制度が違うだけで、どちらも介護保険の給付です。
図:住宅改修と福祉用具、どちらで対応するか
| やりたいこと | 工事する場合 | 工事しない場合 |
|---|---|---|
| 手すりを付けたい | 住宅改修(20万円の枠) | 据え置き型手すり:福祉用具貸与(月数百円〜) |
| 段差をなくしたい | 住宅改修(20万円の枠) | 置くだけスロープ:福祉用具貸与 |
| 浴槽をまたぎやすくしたい | 対象外 | 浴槽台・バスボード:特定福祉用具販売(年10万円まで) |
| 便座を高くしたい | 自治体判断 | 補高便座:特定福祉用具販売 |
| トイレまで行くのが大変 | 住宅改修(手すり・段差) | ポータブルトイレ:特定福祉用具販売 |
特定福祉用具販売は年間10万円を上限に購入費の支給を受けられ、住宅改修の20万円とは別枠です。工事を決める前に、用具で代替できないかを担当のケアマネジャーに確認してください。
申請に必要な書類
一般的に必要となるのは次のとおりです(市区町村により異なります)。
図:必要書類と、誰が用意するか
| 書類 | 用意する人 | 段階 |
|---|---|---|
| 住宅改修費支給申請書 | 本人または家族 | 事前 |
| 住宅改修が必要な理由書 | ケアマネジャー等 | 事前 |
| 工事費見積書 | 施工業者 | 事前 |
| 改修前の状態がわかる写真(日付入り) | 施工業者 | 事前 |
| 改修後の完成予定図 | 施工業者 | 事前 |
| 住宅所有者の承諾書 | 所有者 | 事前(本人所有でない場合) |
| 領収書 | 施工業者 | 事後 |
| 工事費内訳書 | 施工業者 | 事後 |
| 改修後の状態がわかる写真(日付入り) | 施工業者 | 事後 |
改修前の写真は工事後には撮れません。 撮影を業者に依頼しておいてください。
よくある誤解の整理
| よくある誤解 | 実際 |
|---|---|
| 20万円が現金でもらえる | 20万円は計算の上限。支給は自己負担割合を除いた額 |
| 要介護度が高いと枠が増える | 要支援1でも要介護5でも一律20万円 |
| 1回しか使えない | 20万円の枠内なら複数回に分けて使える |
| 年度が変わればリセットされる | 年度では変わらない。3段階上昇か転居のみ |
| 下地補強は自己負担 | 付帯工事として対象 |
| 洗浄便座も付けられる | 洋式→洗浄便座付きは対象外 |
| どこの住宅でも改修できる | 被保険者証に記載された住所の住宅のみ |
まとめ
介護保険の住宅改修で対象になるのは、手すり・段差解消・床材変更・扉の取り替え・便器の取り替え・付帯工事の6種類です。この枠から外れる工事は、どれだけ介護に必要であっても保険は使えません。
判断の順番は次の3ステップです。
- その工事は6種類のいずれかに当てはまるか
- 改修する住宅に本人の住民票があるか
- 着工前に申請できる時間があるか
制度の運用は市区町村ごとに細部が異なります。個別の工事が対象になるかどうかは、必ず担当のケアマネジャーとお住まいの市区町村の介護保険窓口にご確認ください。
よくある質問
介護保険の住宅改修で対象になる工事は何種類ありますか?
要介護度が高いほど支給される金額は増えますか?
夫婦それぞれが要介護認定を受けている場合、40万円使えますか?
手すりの下地補強は自己負担ですか?
賃貸住宅でも住宅改修費は使えますか?
施設に入所中ですが、自宅を改修できますか?
20万円の枠は年度で区切られますか?
この記事の作り方
- 制度の記述の確認日
- 2026年8月19日(厚生労働省の通知および下記の一次情報を参照)
- この記事で扱っていないこと
- 市区町村ごとの申請書類の様式
- 要介護認定そのものの申請手続き
- 立場
- 当サイトは施工を行いません。特定の業者を有利に扱う理由がないため、 工事を減らす選択肢(福祉用具・照明の改善など)も同じ比重で扱っています。 誤りのご指摘はお問い合わせから受け付け、修正時は更新日を改めます。
参考にした一次情報
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」
- 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」
- 各市区町村が公開する居宅介護(介護予防)住宅改修費支給要綱
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