介護保険の住宅改修で対象外になる工事一覧|申請が通らない7つの理由

介護リフォームの情報は、その多くを施工業者が発信しています。受注する立場では「この工事は保険が使えません」とは書きにくいため、対象外の情報だけが世の中に不足しているのが実情です。

しかし実務上、トラブルになるのはほとんどが対象外のケースです。ここでは「保険が使えないのはどんなときか」を、理由別に整理します。

大前提:対象は6種類の工事に限定されている

介護保険の住宅改修で認められているのは、次の6種類だけです。

  1. 手すりの取り付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止・移動の円滑化のための床材の変更
  4. 引き戸等への扉の取り替え
  5. 洋式便器等への便器の取り替え
  6. 上記に付帯して必要となる工事

この6種類に該当しない工事は、どれだけ介護に必要であっても対象外です。ここが判断の出発点になります。詳しくは対象6種類の記事をご覧ください。

以下、対象外になる理由を7つに分けて見ていきます。

理由1:動力を使う機器の設置だから

動力によって段差を解消する機器は、住宅改修の対象外とされています。

対象外になる機器 費用の目安
階段昇降機(いす式・いす昇降機) 40万〜100万円
段差解消機 30万〜80万円
天井走行リフト 50万〜150万円
ホームエレベーター 300万円〜

これらは「段差の解消」に見えますが、動力を用いる点で工事による段差解消とは区別されます

なお、移動用リフトのうち、つり具の部分を除いたものは福祉用具貸与の対象になる場合があります。購入ではなくレンタルであれば別の制度で使える可能性があるため、ケアマネジャーに確認する価値があります。

理由2:工事を伴わないから

住宅改修は「工事」に対する給付です。置くだけ・据え置くだけのものは対象外になります。

対象外になるもの 該当する制度
据え置き型の手すり(床置き・突っ張り式) 福祉用具貸与
持ち運びできる設置型スロープ 福祉用具貸与
浴槽内の手すり(浴槽の縁に挟むもの) 特定福祉用具販売
便器を囲んで据え置く手すり 特定福祉用具販売
ポータブルトイレ 特定福祉用具販売

これは「使えない」という意味ではありません。別の制度で使えます。むしろレンタルなら合わなければ交換できるため、工事より柔軟です。

理由3:老朽化・美観のための工事だから

単なる老朽化、物理的な摩耗、消耗、破損が原因の改修は対象外です。

  • 古くなった床を張り替えるだけの工事
  • 傷んだ壁紙の張り替え
  • 見た目をよくするための内装工事
  • 畳から畳への交換

床材の変更が対象になるのは、滑りの防止や移動の円滑化という目的が明確な場合に限られます。畳をフローリングに変えるのは対象になりますが、それは「移動しやすくする」という目的が説明できるからです。同じ畳に交換する工事には、その目的がありません。

理由4:すでに要件を満たしているものの高機能化だから

もっとも誤解が多いのがトイレです。

工事 対象
和式便器 → 洋式便器 対象
和式便器 → 洋式便器(洗浄機能付き) 便器の取り替えとして対象。ただし機能部分の扱いは自治体判断
洋式便器 → 暖房便座・洗浄機能付き便器 対象外
洋式便器 → 便座の高さを変える工事 対象になる場合がある

すでに洋式である便器を高機能なものに交換する工事は、「和式から洋式への取り替え」に該当しないため対象外です。

同様に、すでに引き戸である扉を、より軽い引き戸に交換するといった工事も、原則として対象外になります。

理由5:住宅の条件を満たしていないから

工事の内容が正しくても、改修する住宅が要件を満たしていないと支給されません。

  • 被保険者証に記載された住所以外の住宅 — 住民票がその住所にあることが必要です。親の家を子が改修する場合、親の住民票の住所を確認してください
  • 一時的に身を寄せている住宅 — 家族の家に一時滞在している場合、その住宅は対象外です
  • 施設入所中・入院中 — 在宅で生活していることが前提です。ただし退所・退院が決まっており、その住宅に戻る具体的な予定があれば認められる場合があります
  • 賃貸住宅で所有者の承諾がない — 承諾書がなければ申請自体ができません

入院中に工事を進めるケースは要注意です。 退院日が決まっていれば事前申請できる自治体が多い一方、退院前に本人が亡くなった場合、支給されないことがあります。この扱いは自治体によって差があるため、事前に窓口へ確認しておくことをおすすめします。

理由6:手続きの順番を間違えたから

工事内容が完全に対象であっても、着工前の事前申請をしていなければ支給されません

これは制度上の要件であり、後から事情を説明しても原則として救済されません。「急いでいたので先に工事した」は通りません。

同様に、申請した内容と異なる工事をした場合、その差分は対象外になります。現場で追加が必要になったら、着工前に変更申請ができるか窓口に相談してください。

理由7:新築・増築にあたるから

住宅改修は、既存の住宅を改修する制度です。

  • 新築工事
  • 増築(部屋を増やす工事)
  • 建て替え

これらは対象外です。また、新築時にバリアフリー仕様にする費用も、住宅改修費の対象にはなりません。

ただし、既存住宅の一部を改修する範囲であれば、増築とみなされない場合もあります。境界が微妙なケースは事前に窓口で確認してください。

判断に迷ったときのチェックリスト

見積書を受け取ったら、各項目について次の順に確認してください。

  1. その工事は6種類のいずれかに当てはまるか
  2. 動力を使う機器の設置ではないか
  3. 工事を伴うものか(置くだけではないか)
  4. 老朽化・美観目的ではなく、安全や移動のためと説明できるか
  5. すでに要件を満たしているものの高機能化ではないか
  6. 改修する住宅に本人の住民票がある
  7. 着工前に申請できる時間があるか

ひとつでも引っかかる項目があれば、着工前にケアマネジャーと市区町村の窓口に確認してください。

対象外だからといって諦めなくてよいもの

対象外の工事でも、別の制度が使える場合があります。

  • 市区町村の独自助成 — 介護保険とは別枠で、バリアフリー改修に上乗せ助成をしている自治体があります
  • 福祉用具貸与・特定福祉用具販売 — 据え置き型のものはこちら
  • 障害者総合支援法の住宅改修費 — 障害者手帳をお持ちの場合、別制度が使えることがあります
  • 住宅改修に関する所得税・固定資産税の特例 — 一定の要件を満たすバリアフリー改修で減税を受けられる場合があります

窓口では「介護保険では対象外でしたが、市の制度で使えるものはありますか」と聞いてみてください。

まとめ

介護保険の住宅改修で対象外になるのは、大きく分けて①動力機器 ②工事を伴わないもの ③老朽化・美観目的 ④高機能化 ⑤住宅の条件を満たさない ⑥手続きの順番違反 ⑦新築・増築の7パターンです。

このうち⑥だけは、知っていれば確実に避けられます。まずは着工前申請を徹底することから始めてください。

なお、対象・対象外の判断は市区町村によって細部が異なります。個別の工事については、必ずお住まいの市区町村の介護保険窓口にご確認ください。