介護リフォームの費用相場とは?箇所別の目安と介護保険20万円の使い方

介護リフォームの費用を調べはじめると、最初に戸惑うのが金額の幅の大きさです。「手すり設置 2万円〜」と書いてあるサイトもあれば、「介護リフォーム 200〜300万円」と書いてあるサイトもあります。どちらも間違いではありません。前者は手すり1本の工事費、後者は戸建て全体をバリアフリー化した場合の総額を指しているからです。

この記事では、「どの工事に、いくらかかるのか」を箇所ごとに分解したうえで、介護保険の住宅改修費(上限20万円)がどこまでをカバーするのかを整理します。

介護リフォームの費用は「工事単位」で考える

介護リフォームは、家全体を一度に作り変えるものではありません。実際に多いのは、困っている場所を1〜3か所だけ直すというやり方です。

そのため費用を把握するときは、「介護リフォームはいくら」ではなく、**「手すりを廊下に付けるといくら」「浴室の段差をなくすといくら」**という工事単位で見るのが正確です。

工事の種類 費用の目安 介護保険の対象
手すりの取り付け(1か所) 2万〜15万円 対象
段差の解消(敷居撤去・スロープ設置) 数千円〜45万円 対象
床材の変更(滑り防止・畳→フローリング) 5万〜25万円 対象
引き戸への交換(開き戸→引き戸) 10万〜60万円 対象
洋式便器への取り替え 15万〜50万円 対象
浴室全体の改修(ユニットバス入替) 60万〜150万円 一部のみ対象
階段昇降機の設置 40万〜100万円 対象外
段差解消機・リフトの設置 30万〜100万円 対象外

金額に幅があるのは、住宅の構造(木造か鉄筋か)、下地の状態、施工地域、使う製品のグレードによって工事の手間が変わるためです。同じ「手すり1本」でも、下地補強が必要かどうかで倍以上変わります。

介護保険で支給されるのは「20万円のうち1〜3割を除いた額」

介護リフォームの費用を考えるうえで中心になるのが、介護保険の住宅改修費の支給です。要支援・要介護の認定を受けている方が対象で、支給限度基準額は1人につき20万円とされています。

ここで誤解が多いのが、「20万円がもらえる」わけではないという点です。正確には次のようになります。

  • 対象となる工事費のうち、20万円までが支給の計算対象
  • そのうち、所得に応じた自己負担割合(1割・2割・3割)を除いた額が支給される
  • 20万円を超えた部分は、全額自己負担

たとえば1割負担の方が20万円ちょうどの工事をした場合、自己負担は2万円、支給されるのは18万円です。3割負担の方であれば自己負担6万円、支給は14万円になります。

30万円の工事をした場合は、20万円分について上記の計算が行われ、超過した10万円は全額自己負担です。つまり1割負担の方なら、自己負担の合計は2万円+10万円=12万円ということになります。

着工前の申請が必須です。 介護保険の住宅改修は、工事を始める前に市区町村へ申請し、承認を受ける必要があります。先に工事をしてしまうと、後から申請しても支給されません。急ぎの場合ほど、この順番を間違えないようにしてください。詳しくは申請の流れの記事で解説しています。

箇所別に見る費用の目安

手すりの取り付け

最も件数が多い工事です。廊下・階段・トイレ・浴室・玄関が主な設置場所になります。

費用は、木下地がしっかりある壁に1本付けるだけなら2万〜5万円程度。一方で、下地がない壁に補強板を入れる場合や、屋外の玄関アプローチにコンクリート基礎から立てる場合は10万〜15万円程度まで上がります。

「1本あたりいくら」という感覚で複数箇所をまとめて依頼すると、下地補強が必要な箇所だけ大幅に高くなることがあるので、見積書では箇所ごとの内訳を確認してください。

段差の解消

敷居を撤去して床の高さをそろえる、スロープを設置する、床をかさ上げする、といった工事が含まれます。

簡易的な設置型スロープであれば数千円〜数万円ですが、これは工事を伴わない置くだけのものなので、住宅改修ではなく福祉用具貸与の扱いになる点に注意が必要です。敷居の撤去や床のかさ上げといった工事を伴うものは、5万〜20万円程度が目安になります。

玄関の上がり框(あがりかまち)に踏み台を設置する場合は3万円程度、屋外に本格的なスロープを新設する場合は20万円以上かかることもあります。

浴室

介護リフォームのなかで、もっとも費用がかさみやすい場所です。

浴室内の手すり設置(5万〜10万円)、洗い場の床を滑りにくい素材に変更(10万〜20万円)、浴室入口の段差解消(10万〜20万円)といった個別工事であれば、介護保険の対象になります。

一方で、浴槽そのものを浅いものに交換する、ユニットバスごと入れ替えるといった工事は、60万〜150万円程度かかるうえ、その大部分が介護保険の対象外です。給付されるのは、あくまで手すり・段差解消・床材変更に相当する部分に限られます。

トイレ

和式便器から洋式便器への取り替えは、介護保険の対象工事に含まれます。費用は15万〜50万円程度で、給排水管の位置を動かす必要があるかどうかで大きく変わります。

すでに洋式である便器を、暖房便座付きや洗浄機能付きに交換する工事は対象外です。これは「和式から洋式への取り替え」に該当しないためです。

玄関・出入口

開き戸を引き戸に交換する工事は10万〜60万円程度。ドア枠ごと交換するか、既存枠を活かすかで幅が出ます。

屋外のアプローチ部分については、通路の舗装(コンクリート打ち)も対象になる場合があります。ただし市区町村によって判断が分かれる領域なので、事前に窓口で確認してください。

費用を抑えるための3つの考え方

1. 「今困っていること」から優先順位をつける

将来を見越して一度に広範囲を工事すると、総額が跳ね上がります。しかも身体状況は変化するため、先回りして作った設備が結局使われないということが起こります。

まずは実際に困っている動線(トイレまでの移動、浴室への出入りなど)に絞って工事し、状況が変わったら追加する、という進め方のほうが結果的に無駄が出にくくなります。介護保険の20万円は一度に使い切る必要はなく、複数回に分けて使えます。

2. 福祉用具のレンタルで代替できないか検討する

据え置き型の手すり、浴槽内に置く椅子、スロープなど、工事をせずに置くだけで解決できるものは少なくありません。これらは福祉用具貸与の対象で、月数百円〜のレンタル料で使えます。

工事をしてしまうと元に戻せませんが、レンタルなら合わなければ交換できます。担当のケアマネジャーに「これは工事が必要か、用具で足りるか」を必ず相談してください。

3. 相見積もりを取る

介護リフォームの見積額は、業者によって差が出ます。同じ手すり1本でも、材料費の見方、下地補強の考え方、出張費の扱いが各社で違うためです。

介護保険の住宅改修は着工前の申請が必要なので、複数社の見積もりを取る時間は制度上あらかじめ確保されています。1社だけで決めてしまうと、その金額が高いのか安いのか判断できません。業者選びの記事で、見積書のどこを比べるべきかを整理しています。

よくある誤解の整理

よくある誤解 実際
20万円がもらえる 20万円は「計算の上限」。実際の支給は自己負担割合を除いた額
あとから申請すればいい 着工前の申請が必須。事後申請は支給されない
1回しか使えない 20万円の枠内なら複数回に分けて使える
家全体をバリアフリーにできる 対象は6種類の工事に限定。設備の新設は多くが対象外
どの業者でもいい 施工内容が要件を満たさないと、申請が通らないことがある

まとめ

介護リフォームの費用は、工事単位で見れば手すり2万円台から、浴室改修の100万円超までと大きな幅があります。判断の起点になるのは、次の3つです。

  1. その工事が介護保険の対象6種類に入っているか(入っていなければ全額自己負担)
  2. 20万円の枠をどこに使うのが効果的か(一度に使い切る必要はない)
  3. 工事ではなく福祉用具で代替できないか(元に戻せる選択肢を先に検討する)

制度の運用は市区町村によって細部が異なります。実際の申請にあたっては、必ず担当のケアマネジャーとお住まいの市区町村の介護保険窓口にご確認ください。