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住宅改修の20万円で足りないとき|自治体の上乗せ助成と工事の優先順位

公開日:2026年9月2日最終更新:2026年9月2日カテゴリ:制度・費用

見積書を受け取って、金額が20万円を超えていた。ここから何をすればよいのか、という状況を想定しています。

結論から書くと、確認する順番があります。いきなり工事を削る前に、使える制度が残っていないかを先に潰してください。順番を間違えると、使えたはずの助成を取り逃します。

まず、超えた分がどうなるかを正確に把握する

介護保険の住宅改修は、支給の計算対象になるのが20万円までです。20万円を超えた部分には、支給がまったく付きません。

工事費 自己負担割合 支給される額 自己負担の合計
20万円 1割 18万円 2万円
30万円 1割 18万円 12万円
40万円 1割 18万円 22万円
60万円 1割 18万円 42万円
30万円 2割 16万円 14万円
30万円 3割 14万円 16万円

工事費が20万円から30万円に増えると、自己負担は2万円から12万円に、6倍になります。1万円の追加工事が、そのまま1万円の自己負担増になるからです。

ここで多いのが「どうせ超えるから」と諦めてしまうケースです。 超過分に公的な支援がまったくないわけではありません。介護保険の外側に、少なくとも4つの確認先があります。

足りないときに確認する4つの順番

順番 確認すること 窓口
1 市区町村の独自助成があるか 高齢福祉の担当課
2 独自助成が介護保険と併用できるか、20万円が差し引かれるか 同上
3 工事を福祉用具(レンタル・購入)に置き換えられないか ケアマネジャー
4 20万円の枠が再設定される条件に当たらないか 介護保険の担当課

この順番には理由があります。1と2は、工事の内容が確定する前に確認しないと間に合わないからです。独自助成には独自の事前申請があり、着工後は受け付けられません。3と4は工事内容が決まってからでも動けます。

順番1:市区町村の独自助成があるか

介護保険の住宅改修は全国一律で上限20万円ですが、それとは別に、自治体が独自予算で持っている助成があります。

当サイトで政令指定都市20市・中核市62市・東京23区の計105自治体を悉皆で調べたところ、74自治体に独自の制度があり、確認できた制度は94本ありました。上限額は0円から200万円まで開いていて、上限が100万円以上の自治体だけで13あります。

自治体 上限 制度の例
江戸川区 200万円 住まいの改造助成
中央区 185.4万円 住宅設備改善給付
足立区 133.2万円 高齢者住宅改修給付(階段昇降機)
横浜市 120万円 住環境整備費の助成
川崎市・浜松市・神戸市・千代田区・台東区・練馬区・金沢市・西宮市・姫路市 各100万円 ─

金額は上限額であって、必ずもらえる額ではありません。74自治体のうち66自治体で、所得・課税・介護保険料段階などの要件を確認しました。助成率が所得で変わる制度がほとんどです。

窓口は介護保険課ではありません。 独自助成は高齢福祉課が持っていることが多く、介護保険の窓口で聞くと「そういう制度はありません」と返ってくることがあります。「高齢者の住宅改修について、介護保険の20万円とは別に、市(区)の助成はありますか」と、制度を分けて尋ねてください。

自治体ごとの制度名・上限額・所得要件・出典URLは自治体独自の住宅改修助成の調査(105自治体)にまとめています。お住まいの市区町村のページは自治体別に調べるからも確認できます。

制度が「探せない場所」にあることがあります

自治体のサイトで「住宅改修 助成」と検索しても見つからないことがあります。呼び方が統一されていないためです。

「高齢者住宅改造費助成」「自立支援住宅改修給付」「住環境整備費の助成」「住まいの改造助成」「高齢者にやさしい住まいづくり」──いずれも同種の制度の名前です。

置かれている場所も自治体によって違います。大分市の制度は高齢福祉ではなく、住宅部門(くらし>住まい>改修・リフォーム支援)に置かれています。介護保険や高齢福祉のページからはたどれませんでした。世田谷区では、区の公式サイト内で「住宅改修 助成金」を検索すると省エネ住宅の補助金が先に出てきます。

順番2:併用できるか、20万円が差し引かれるか

ここがいちばん金額に効くのに、いちばん見落とされるところです。

「独自助成が100万円ある」と分かっても、介護保険の20万円と足して120万円使える、とは限りません。

105自治体で確認できた94制度のうち、併用可と明記していたのは30制度、「介護保険が優先」として保険の対象工事を独自助成から外していたのが23制度、併用不可が20制度、扱いを確認できなかったのが21制度でした。

さらに、「併用可」と書いてある制度の中にも、助成の上限額から20万円を差し引く条件が付いているものがあります。

自治体 公式サイトの記載 合計で使える額の考え方
神戸市 「限度額から20万円を控除した額が助成対象」 助成の上限(100万円)に収まる
岡山市 「介護保険法の住宅改修費の支給を受ける場合は助成額から20万円を減額」 助成の上限に収まる
北九州市 「介護保険の支給限度額(20万円)を超える部分」が助成対象 市の広報では20万円+30万円で合計最大50万円

同じ「併用可」でも、合計額が逆になります。窓口では「併用できますか」だけでなく、「助成の上限額から介護保険の20万円は差し引かれますか」まで聞いてください。

工事の内容ごとに扱いが分かれる自治体もあります。練馬区は、浴槽の取替と便器の洋式化は併用可、流し・洗面台の取替、玄関造作物の撤去、昇降機の設置は併用不可と、設備の項目ごとに明示しています。

申請の順番が逆の自治体があります。 新宿区は「設備改修の手続きを必ず先におこなってください。工事終了、工事中のものは対象となりません」と明記しています。一方で足立区は「介護保険制度の住宅改修を一定の額以上使用している方」が要件で、先に介護保険を使っていないと対象になりません。着工前に、両方の窓口で順番を確認してください。

制度ごとの原文は介護保険20万円と自治体助成は併用できるかに載せています。

順番3:工事を福祉用具に置き換えられないか

見積書の中に、福祉用具で代替できる項目が混ざっていることがあります。福祉用具貸与と特定福祉用具販売は住宅改修とは別の枠なので、20万円の枠を消費しません。

見積書にある工事 置き換えられる用具 枠
壁に固定する手すり 据え置き型手すり・突っ張り式手すり(レンタル) 消費しない
浴室の手すり 浴槽用手すり(購入) 年10万円の販売枠
トイレの手すり 便器を囲む据え置き手すり(購入) 年10万円の販売枠
段差解消(スロープ造作) 可搬型スロープ(レンタル) 消費しない
便座の高さ調整 補高便座(購入) 年10万円の販売枠

据え置き型の手すりは月300〜600円程度のレンタルです。工事の手すりが1か所2万〜15万円かかることを考えると、20万円の枠を空けるうえで効果があります。

身体状況がまだ変わりそうな時期であれば、位置を動かせるレンタルから試すほうが合理的でもあります。工事をしてしまうと、位置の変更には再工事が必要です。

見積書を持って、ケアマネジャーに「この中で福祉用具に置き換えられるものはありますか」と聞いてください。

順番4:20万円の枠が再設定される条件に当たらないか

20万円の枠は、要介護状態区分が3段階以上上がった場合と、転居した場合に再設定されます。時間の経過だけでは復活しません。

3段階上昇による再設定は生涯で1回だけです。また、支給限度基準額の管理上、要介護4と要介護5は同じ段階として扱われるため、要介護4から5への変更では段階が動きません。

いま区分変更申請を出している最中であれば、結果が出るまで工事を待つかどうかの判断が要ります。詳しくは20万円がリセットされる条件で整理しています。

それでも足りないとき:工事の優先順位の付け方

制度を確認し終えても超過する場合は、工事を削るか、分割するかになります。削る順番の考え方です。

優先度 場所・工事 理由
最優先 浴室の手すり・床材 濡れた床での転倒は骨折につながりやすい
最優先 階段の手すり 転落は被害が最も大きい
高 夜間のトイレ動線(廊下の手すり・段差) 暗く、判断力が落ちる時間帯の移動
中 玄関の上がり框の段差解消 外出頻度が高い場合は上げる
後回し可 使っていない部屋の工事 動線に入っていない場所
後回し可 扉の交換 開閉に実際の支障が出てから

判断の軸は「転んだときの被害の大きさ」です。転倒の頻度ではありません。廊下で転ぶのと、階段や浴室で転ぶのとでは結果が違います。

分割して使うという選択

20万円は一度に使い切る必要がありません。回数の制限もなく、8万円の工事をしたあとに残り12万円分を別の時期に使えます。

  • いま困っている動線だけを工事する(例:浴室と階段で15万円)
  • 状態が変わってから、残りの5万円分を追加で工事する

先に全部やってしまうと、身体状況が変わったときに枠が残っていません。改善する可能性もあります。慌てて使い切らないほうが結果的に得をすることがあります。

対象外の工事は、独自助成のほうを先に見る

介護保険で対象外の工事(浴槽の取替え、階段昇降機、段差解消機、洗面台の取替えなど)は、20万円の枠とは無関係です。これらは独自助成のほうに枠があることがあります。

工事 介護保険 自治体の独自助成(当サイト調査)
浴槽の取替え 対象外 21自治体。うち18自治体が上限37.9万円。練馬区25万円、板橋区・足立区20万円
階段昇降機 対象外 上限30万円(渋谷区)〜200万円(江戸川区)
段差解消機 対象外 江戸川区は設置に伴う舗装改修に上限200万円
流し・洗面台の取替え 対象外 21自治体。うち20自治体が上限15.6万円
便器の洋式化 対象 18自治体が上乗せ。うち17自治体が上限10.6万円

「介護保険では対象外です」で相談を終えないでください。 対象外の工事こそ、独自助成の主戦場になっていることがあります。種目ごとの上限額は設備別に見た自治体独自の住宅改修助成にまとめました。

減税で取り返す

工事をした年の税で戻せる分があります。金額は大きくありませんが、手続きだけで済みます。

  • 所得税の控除:一定要件のバリアフリー改修について、工事をした年の確定申告で申告します
  • 固定資産税の減額:工事完了後3か月以内に市区町村の税担当課へ申告します

固定資産税の減額は申告期限が短いので、工事が終わったらすぐ確認してください。制度の全体像は介護リフォームの補助金は介護保険だけ?にまとめています。

要介護認定を受けていない場合

そもそも認定がなければ、介護保険の住宅改修は使えません。ただし、認定がなくても使える住宅改修の助成が28自治体にありました。

しかもそのうち5自治体(中野区・杉並区・荒川区・板橋区・足立区)は、「非該当と判定されてから6か月以内/1年以内」という申請期限を設けています。この期限は認定の結果通知には書かれておらず、高齢福祉部門の助成ページにだけ記載されています。

非該当の通知を受け取った時点で、その場で高齢福祉の担当課に相談してください。詳しくは要介護認定なしで使える住宅改修の助成にまとめています。

まとめ

  • 20万円を超えた分は全額自己負担。工事費が20万円から30万円になると、自己負担は2万円から12万円に増える
  • 工事を削る前に、市区町村の独自助成を確認する。105自治体のうち74自治体に制度があり、上限は最大200万円
  • 窓口は高齢福祉課。介護保険課とは所管が違うため、聞かないと案内されないことがある
  • 「併用可」でも20万円が差し引かれる自治体がある。合計額まで確認する
  • 申請の順番は自治体によって逆。着工前に両方の窓口で確認する
  • 見積書の中に福祉用具で置き換えられる項目がないかケアマネジャーに確認する
  • 20万円は分割して使える。いま困っている動線から着工する
  • 介護保険で対象外の工事(浴槽・昇降機・洗面台)こそ、独自助成に枠があることがある

よくある質問

住宅改修の20万円を超えた分はどうなりますか?
超えた分は全額自己負担が原則です。30万円の工事をした場合、支給の計算対象は20万円までなので支給額は18万円(1割負担の場合)で頭打ちになり、自己負担は12万円になります。ただし市区町村の独自助成が使える場合があります。105自治体を調べたところ、74自治体に介護保険とは別枠の住宅改修助成がありました。
20万円で足りないとき、まず何をすればよいですか?
高齢福祉の担当課に「介護保険の20万円とは別に、市(区)独自の住宅改修の助成はありますか」と聞いてください。介護保険課とは所管が違うことが多く、介護保険の窓口だけで相談を終えると案内されないことがあります。当サイトの調査では、上限が100万円以上の自治体が13ありました。
介護保険と自治体の助成を両方使えば、20万円+助成の上限額が使えますか?
自治体によります。105自治体のうち30自治体が併用可と明記していましたが、そのうち9制度は「助成の上限額から20万円を差し引く」条件が付いていました。神戸市は「限度額から20万円を控除した額が助成対象」なので、合計で使える額は助成の上限に収まります。一方で北九州市は「20万円を超える部分」を助成対象とし、合計最大50万円と説明しています。金額を足す前に、差し引かれるかどうかを確認してください。
工事を減らして20万円に収めるには、どこを優先すればよいですか?
転倒したときの被害が大きい場所から順に着手してください。浴室・階段・夜間のトイレ動線の3つが優先です。手すりは1か所2万〜15万円と幅がありますが、下地の有無で金額が変わります。床材の変更や扉の交換は、転倒の実績がない限り後回しにできることが多いです。
一度に工事しないと損ですか?
損にはなりません。20万円の枠は複数回に分けて使え、回数の制限もありません。身体状況は改善も悪化もするため、いま困っている動線に絞って着工し、状態が変わってから残りの枠を使うほうが結果として無駄が出にくくなります。
要介護度が上がれば20万円がもう一度使えますか?
要介護状態区分が3段階以上上がった場合に、新たに20万円の枠が1回だけ設定されます。転居した場合も再設定されます。時間の経過だけでは復活しません。
対象外の工事に使える制度はありませんか?
介護保険で対象外の浴槽の取替えや階段昇降機を、自治体の独自助成が対象にしている場合があります。当サイトの調査では、浴槽の取替えを助成の対象にしていた自治体が21(うち18自治体が上限37.9万円で一致)、階段昇降機の助成は上限30万円から200万円まで確認できました。所得税の控除と固定資産税の減額もあわせて確認してください。

この記事の作り方

制度の記述の確認日
2026年9月1日(厚生労働省の通知および下記の一次情報を参照)
横断して確認した自治体
105件の市区町村が公開する要綱・案内ページ。 運用が分かれる論点は「自治体によって判断が異なる」と明記し、断定を避けています。
この記事で扱っていないこと
  • 各自治体の申請書類の書き方
  • 減税の具体的な税額計算
  • 障害者総合支援法の住宅改修費の詳細
立場
当サイトは施工を行いません。特定の業者を有利に扱う理由がないため、 工事を減らす選択肢(福祉用具・照明の改善など)も同じ比重で扱っています。 誤りのご指摘はお問い合わせから受け付け、修正時は更新日を改めます。

参考にした一次情報

  1. 厚生労働省「介護保険における住宅改修」
  2. 当サイトの独自調査「自治体独自の住宅改修助成(105自治体・2026年9月1日確認)」

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