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住宅改修が必要な理由書|家族が伝えるべきことと差し戻される書き方
介護保険の住宅改修で必要な書類のうち、家族が自分では書けないのに、家族の関わり方で質が決まるのが理由書です。
インターネットで「住宅改修 理由書」を調べると、ケアマネジャー向けの書き方の解説がほとんどです。家族の側から「では自分は何をすればよいのか」が分かる情報は少ない。
この記事は、家族の側から見た理由書を整理します。
理由書とは何をする書類か
正式には「住宅改修が必要な理由書」です。事前申請の必須書類で、これがなければ支給されません。
役割は1つです。なぜその工事が必要なのかを、本人の身体状況と結びつけて説明すること。
図:3つの書類が、それぞれ別のことを示す
| 書類 | 何を示すか |
|---|---|
| 見積書 | 何にいくらかかるか |
| 図面・写真 | どこをどう変えるか |
| 理由書 | なぜそれが必要か |
見積書と図面だけでは、工事が「介護のために必要」だと判断できません。同じ手すりの設置でも、介護のためなのか、単に便利にしたいのかは書類からは分かりません。その必要性を担保するのが理由書です。
理由書が弱いと、工事内容が正しくても差し戻されます。 手すりの位置も見積書の内訳も完璧なのに、理由書の記述が「移動が困難なため」の一文だけ、という状態では通りません。差し戻しは1回でおおむね1週間の遅れになります。
誰が書けるか
作成できる者は定められています。家族や施工業者は作成できません。
図:作成できる者/できない者
| 作成できる者 | 主な場面 |
|---|---|
| 介護支援専門員(ケアマネジャー) | 要介護の場合の中心 |
| 地域包括支援センターの担当職員 | 要支援の場合の中心 |
| 福祉住環境コーディネーター2級以上 | 上記がいない場合など |
| 作業療法士・理学療法士 | リハビリを担当している場合 |
| その他、市区町村が認める者 | 自治体の運用による |
「その他、市区町村が認める者」の範囲は、自治体によって正反対になります。 105自治体を調べたところ、岡山市は建築士(ホームヘルパー2級以上の修了者)・医師・マンションリフォームマネジャーまで認めていましたが、堺市は建築士を明示的に除外していました。熊本市は資格があるだけでは足りず、事前に市へ「理由書作成者」として登録することを求めています。自治体ごとの実測は申請期限と書類の名義要件(105自治体)にまとめました。
担当のケアマネジャーがいれば、まずその方に依頼します。 決まっていない場合は地域包括支援センターに相談してください。
施工業者が「理由書もうちで作ります」と言ってきた場合は注意が必要です。業者は作成できません。 業者が下書きを用意してケアマネジャーに渡す、という運用はあり得ますが、その場合も内容の責任は作成者にあります。
家族が伝えるべきこと
ここが本題です。理由書の材料は、家族が伝える情報から作られます。
ケアマネジャーは本人の生活を全部見ているわけではありません。月1回の訪問で把握できることには限りがあります。夜間のこと、家族が介助している場面、本人が家族にだけ言うことは、伝えないと反映されません。
伝える内容を「動作」で分解する
「歩くのが不安」ではなく、どの動作のどこで困っているかに分解して伝えてください。
| 伝え方(不十分) | 伝え方(十分) |
|---|---|
| 歩くのが不安 | 廊下の途中で壁に手をつくが、途中に手をつける場所がなく、そこでふらつく |
| トイレが心配 | 便座から立ち上がるとき、両手で膝を押して起き上がっている。1日8回そうしている |
| お風呂が危ない | 浴槽をまたぐとき、片足で立つ瞬間に体が揺れる。2回転びかけた |
| 段差でつまずく | 和室と廊下の3cmの段差で、右足のつま先が引っかかる。すり足になっている |
| 夜が不安 | 夜間に3回トイレに起きる。廊下が暗く、壁を手で探りながら歩いている |
図:同じ困りごとを、伝わる形に変える
右側には5つの要素が入っています。
- 場所(廊下の途中、便座、浴槽、和室と廊下の間)
- 動作(手をつく、立ち上がる、またぐ、つま先が引っかかる)
- 頻度(1日8回、夜間に3回)
- すでに起きたこと(2回転びかけた)
- 本人が今やっている代償動作(両手で膝を押す、壁を手で探る)
この5つが揃うと、ケアマネジャーは工事の必要性を具体的に記述できます。
5番目の「代償動作」がとくに重要
本人が困難を補うためにやっている動作は、理由書の説得力を大きく変えます。
図:代償動作は「今の環境では安全に動けていない」証拠になる
- 両手で膝を押して立ち上がっている
- 壁を手で探りながら歩いている
- 家具に手をついて移動している(家具が動いて危険)
- 座って足から先に浴槽に入っている
- 手すりの代わりにタオル掛けを掴んでいる(強度がなく危険)
これらは「今の環境では安全に動作できていない」という直接的な証拠です。「タオル掛けを掴んでいる」という事実は、「そこに手すりが必要」という結論に直結します。
メモを取ってから伝えてください。 面談の場で思い出そうとすると、印象的な出来事だけを話して、日常的に起きていることを言い忘れます。1週間ほど、気づいたことを書き留めておくのが確実です。日付・時間・場所・何が起きたかの4項目で足ります。
差し戻される記述の特徴
自治体側が判断できない記述は差し戻されます。
図:自治体が判断できない記述
| 差し戻されやすい記述 | なぜ判断できないか |
|---|---|
| 「移動が困難なため」 | どの移動の、何が困難なのか分からない |
| 「転倒の危険があるため」 | どこで、どの動作で危険なのか分からない |
| 「本人・家族の希望により」 | 希望は必要性の根拠にならない |
| 「将来的に必要になるため」 | 現在の困難が示されていない |
| 「安全のため」 | 具体性がない |
| 工事内容と結びついていない | その工事で改善する理由が不明 |
「本人・家族の希望により」は、理由として機能しません。 制度は「介護のために必要な工事」に対して給付するもので、希望の有無は判定の材料になりません。
「将来的に必要になるため」も弱い記述です。 現在困っていることが起点になっている必要があります。この点は工事範囲の判断にも関わり、先回りした工事は使われないまま終わることがあります。詳しくは失敗する5パターンの記事で整理しています。
工事内容と理由書の整合
もう一つの差し戻し理由が、書類間の不一致です。
| 確認すること | 不一致の例 |
|---|---|
| 理由書の工事箇所と見積書の工事箇所 | 理由書は浴室、見積書はトイレも含む |
| 理由書の工事内容と図面 | 理由書は横手すり、図面はL字型 |
| 記載された箇所数 | 理由書は2か所、見積書は4か所 |
| 対象外工事の扱い | 理由書に対象外工事の記述が混ざっている |
現地調査のあとに工事内容が変わったら、理由書も修正が必要です。 「業者と相談して手すりを1本追加した」という変更は普通に起こりますが、理由書がそのままだと整合が取れません。
変更が出たら、その時点でケアマネジャーに連絡してください。 提出直前に気づくと、修正の時間が取れずに提出が1週間遅れます。
依頼のタイミング
理由書は、書類のなかでもっとも待ち時間が長くなるものです。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 相談の初回 | 「理由書をお願いします」と伝えておく |
| 現地調査の前 | 困っている動作をメモにまとめて渡す |
| 現地調査 | 可能ならケアマネジャーに立ち会ってもらう |
| 見積書の取得後 | 工事内容が確定したことを伝える |
| 提出の1週間前 | 内容を確認させてもらう |
図:理由書は、もっとも待ち時間が長い書類
相談の初回に依頼しておくことが要点です。 見積書がそろってから依頼すると、そこから数日〜1週間待つことになり、その分だけ着工が遅れます。
現地調査への立ち会いを依頼できると、理由書の質が上がります。 ケアマネジャーが実際の環境と本人の動作を見た状態で書けるためです。日程調整が難しい場合は、写真を撮って渡してください。
退院に合わせる場合のスケジュールは申請の流れの記事で逆算しています。
理由書を確認するときに見る点
提出前に目を通させてもらえる場合、次を確認してください。
- 伝えた困りごとが反映されているか
- 事実と異なる記述がないか(頻度・回数・すでに起きたこと)
- 工事箇所が見積書と一致しているか
- 工事内容(手すりの形状・位置)が図面と一致しているか
- 対象外の工事の記述が混ざっていないか
- 本人の身体状況の記述が、現在の状態に合っているか
修正を求めるのは失礼ではありません。 事実と異なる記述があれば、差し戻しの原因になり、結果的にケアマネジャーの手間も増えます。気づいた時点で伝えるほうが双方にとって早く済みます。
ただし、記述の表現や書き方そのものは作成者の判断です。 「もっと強く書いてほしい」といった要望は適切ではありません。伝えるのは事実の追加と誤りの指摘に留めてください。
メモの取り方(1週間分でよい)
伝える情報の質を上げる方法は、書き留めておくことです。面談の場で思い出そうとすると、印象的な出来事しか話せません。
記録するのは4項目だけで足ります。
図:記録するのは4項目だけ
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 日付・時間 | 8月14日 2時ごろ |
| 場所 | 寝室から廊下に出たところ |
| 何が起きたか | 壁を手で探りながら歩いていた。途中で立ち止まった |
| 本人の様子・言葉 | 「暗くて足元が見えない」と言っていた |
1週間分たまれば、頻度が見えてきます。 「夜間にトイレへ3回」「そのうち2回はふらついた」といった数字は、理由書の記述に直接使えます。
スマートフォンのメモアプリで十分です。 気づいたときにその場で数行だけ書く。整った文章にする必要はありません。むしろ「壁を手で探る」「膝を押して立つ」といった動作の生の描写のほうが、理由書には有用です。
書き留めるときは、評価ではなく事実を書いてください。「危なかった」ではなく「右足のつま先が敷居に引っかかった」と書くほうが役に立ちます。
現地調査に立ち会ってもらう
理由書の質がもっとも上がるのは、作成者が実際の環境と本人の動作を見た場合です。
| 立ち会いの形 | 得られること |
|---|---|
| ケアマネジャーが現地調査に同席 | 環境と業者の提案を同時に見られる |
| ケアマネジャーが別途訪問 | 本人の動作をじっくり見られる |
| リハビリ職(理学療法士・作業療法士)が同席 | 身体機能の観点から位置を判断できる |
| 立ち会いなし(写真を渡す) | 最低限の情報は伝わる |
リハビリ職の立ち会いが得られる場合、質が大きく変わります。 手すりの高さや形状は身体機能から決まるもので、身体の動きを見慣れている人の判断は業者の経験則より正確です。訪問リハビリを利用している場合や、退院前カンファレンスがある場合は、そこで相談してください。
日程が合わない場合は写真を渡します。撮るのは次の3種類です。
- 引きの写真 — 部屋全体が分かるもの(場所の特定に使う)
- 寄りの写真 — 工事する箇所(壁の状態、段差の高さ)
- 動作の写真または動画 — 本人がその場所で動いている様子
動作の記録がとくに有用です。 「両手で膝を押して立ち上がっている」という説明よりも、その様子が写っているほうが正確に伝わります。撮影は本人の同意を得てから行ってください。
ケアマネジャーが決まっていない場合
理由書の作成を依頼する相手がいない、という状況もあります。
| 状況 | 相談先 |
|---|---|
| 要支援1・2 | 地域包括支援センター(担当職員が作成できる) |
| 要介護1以上でケアマネ未定 | 居宅介護支援事業所を選ぶ。地域包括支援センターが紹介できる |
| 入院中 | 病院の医療相談室・地域連携室 |
| 認定申請中 | 地域包括支援センター |
| どこに相談すればよいか分からない | 地域包括支援センター |
地域包括支援センターが起点になります。 中学校区ごとに設置されており、介護保険の対象になる前の段階からでも相談できます。市区町村の窓口で場所を教えてもらえます。
入院中の場合は、病院の医療相談室(地域連携室)に相談してください。退院支援の一環として、地域のケアマネジャーや地域包括支援センターにつないでもらえます。退院前カンファレンスの場でリハビリ職に相談できるのも、この経路の利点です。
家族が「やらないほうがよいこと」
善意でやったことが、かえって手続きを遅らせる場合があります。
図:善意でやると、かえって遅れること
| やらないほうがよいこと | 理由 |
|---|---|
| 理由書を自分で下書きして渡す | 作成者の判断で書く書類。かえって手間になることがある |
| 施工業者に理由書の作成を頼む | 業者は作成できない。整合が取れない書類になる恐れ |
| 「もっと強く書いてほしい」と要望する | 事実に基づかない記述は差し戻しの原因になる |
| 工事内容が変わったのに連絡しない | 書類間の不一致で差し戻される |
| 提出直前に大量の情報を追加する | 修正の時間が取れず、提出が遅れる |
「もっと強く書いてほしい」という要望は避けてください。 理由書は事実に基づく書類です。実態より重く書かれた記述は、審査の過程で他の書類と矛盾し、かえって差し戻しにつながります。
家族がやるべきことは、事実を具体的に、早めに、漏れなく伝えることです。表現や書き方は作成者に委ねてください。
情報の追加は現地調査までに済ませるのが理想です。提出直前に「そういえば夜間はもっとひどくて」と追加すると、書き直しが発生して提出が1週間遅れます。1週間分のメモを、現地調査の日に渡すのがちょうどよいタイミングです。
まとめ
理由書について家族が押さえるべき点は4つです。
- 家族は書けないが、材料は家族が渡す(伝える情報の質が理由書の質になる)
- 動作で分解して伝える(場所・動作・頻度・すでに起きたこと・代償動作の5点)
- 相談の初回に依頼する(もっとも待ち時間が長い書類)
- 工事内容が変わったら理由書も修正(書類間の不一致は差し戻しの原因)
とくに「本人が困難を補うためにやっている動作」は、必要性の直接的な証拠になります。タオル掛けを掴んでいる、家具に手をついている、といった事実を書き留めて伝えてください。
理由書の様式と求められる記載水準は市区町村によって異なります。実際の作成にあたっては、担当のケアマネジャーまたは地域包括支援センターにご相談ください。
よくある質問
住宅改修が必要な理由書は誰が書くのですか?
家族は何もしなくてよいのですか?
理由書がないと申請できませんか?
依頼してからどれくらいかかりますか?
どういう書き方だと差し戻されますか?
ケアマネジャーがまだ決まっていない場合はどうすればよいですか?
理由書の内容を家族が確認できますか?
工事の内容が理由書と違ってもよいですか?
この記事の作り方
- 制度の記述の確認日
- 2026年8月19日(厚生労働省の通知および下記の一次情報を参照)
- この記事で扱っていないこと
- 理由書の様式そのものの記入代行
- ケアマネジャー向けの書き方の指導
- 個別の記述が通るかどうかの判断
- 立場
- 当サイトは施工を行いません。特定の業者を有利に扱う理由がないため、 工事を減らす選択肢(福祉用具・照明の改善など)も同じ比重で扱っています。 誤りのご指摘はお問い合わせから受け付け、修正時は更新日を改めます。
参考にした一次情報
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」
- 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」
- 各市区町村が公開する住宅改修が必要な理由書の様式・記入例
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