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賃貸・分譲マンションの介護リフォーム|承諾の取り方と工事できない場合の代替

公開日:2026年8月26日最終更新:2026年8月26日カテゴリ:制度・費用

「持ち家じゃないから介護リフォームは無理」と考えて、相談する前に諦めてしまうケースがあります。

これは誤解です。 介護保険の住宅改修は、持ち家に限定されていません。賃貸住宅でも、分譲マンションでも使えます。

ただし持ち家と違って、自分だけでは決められないという制約が加わります。何が必要になるのか、どこまでできるのかを整理します。

まず結論:住まいの形態別にできること

住まいの形態 介護保険の住宅改修 必要な手続き 難易度
持ち家(本人名義) 使える 通常の事前申請のみ 低
持ち家(家族名義・同居) 使える 所有者の承諾書 低
民間の賃貸住宅 使える 所有者(大家)の承諾書 中
UR賃貸・公社住宅 使える 事業主体への申請 中
公営住宅 使える 管理者への申請 中
分譲マンション(専有部) 使える 管理規約の確認 中
分譲マンション(共用部) 制度上は対象だが実質困難 管理組合の承認 高
施設サービスに含まれる住居 原則対象外 ─ ─

図:住まいの形態別 ── 使えないのは1つだけ

持ち家(本人名義)使える通常の事前申請のみ持ち家(家族名義)使える所有者の承諾書が必要民間の賃貸住宅使える大家の承諾書が必要UR・公社・公営住宅使える事業主体への申請自治体が改修する制度も分譲(専有部)使える管理規約の範囲内で分譲(共用部)実質困難管理組合の承認が必要玄関扉・外廊下・外階段 持ち家(本人名義)使える通常の事前申請のみ持ち家(家族名義)使える所有者の承諾書が必要民間の賃貸住宅使える大家の承諾書が必要UR・公社・公営住宅使える事業主体への申請自治体が改修する制度も分譲(専有部)使える管理規約の範囲内で分譲(共用部)実質困難管理組合の承認が必要玄関扉・外廊下・外階段
「持ち家じゃないから無理」は誤解です。制度上使えないのは、施設サービスに含まれる住居だけです。それ以外は手続きが増えるだけで、20万円の枠は同じように使えます。

「使えない」のは最後の1つだけです。それ以外は、手続きが増えるだけで制度上は使えます。

賃貸住宅:承諾書がすべての起点になる

賃貸で必要になるのは、所有者の承諾書です。これは介護保険の申請書類の一部として提出を求められます。

口頭の了解では足りません。 「大家さんはいいと言っている」という状態で工事を進めると、事前申請の段階で書類不備として差し戻されます。差し戻しは1回でおおむね1週間の遅れになります。

承諾書の入手手順

多くの市区町村が承諾書の様式を用意しています。自作する必要はありません。

  1. 市区町村の介護保険窓口で様式をもらう(Webで公開されている自治体も多い)
  2. 工事の内容・箇所を具体的に記入する(「手すり工事」ではなく「浴室内の壁に横手すり1本、洗い場の壁に縦手すり1本」まで書く)
  3. 原状回復の扱いを明記する(ここが最重要。後述)
  4. 所有者に渡して記入・署名を依頼する
  5. 事前申請の書類一式に添付する

空欄の様式をそのまま渡すのは避けてください。 何をされるのか分からない状態では、所有者は判断できません。工事の内容が具体的に書かれていて、原状回復の条件が明示されていれば、判断は早くなります。

原状回復の扱いを、必ず書面で確認する

ここが賃貸でもっとも見落とされる点です。

図:承諾書で決めておくこと ── 3つ目がもっとも危険

原状回復は不要 → そのまま残して退去できる。追加費用なし原状回復が必要 → 撤去費用が発生する(金額を見込んでおけば対応できる)条件の記載なし → 退去時に争いになる。予測できない工事の内容・箇所が具体的に書かれている(「手すり工事」では不十分)費用の負担者が明記されている(所有者に負担はない旨) 原状回復は不要 → そのまま残して退去できる。追加費用なし原状回復が必要 → 撤去費用が発生する(金額を見込んでおけば対応できる)条件の記載なし → 退去時に争いになる。予測できない工事の内容・箇所が具体的に書かれている(「手すり工事」では不十分)費用の負担者が明記されている(所有者に負担はない旨)
撤去費用は介護保険の対象外です。手すり1本の撤去と壁の補修で数千円〜数万円、箇所が多ければ十万円単位になることもあります。
承諾の条件 退去時に起きること 費用の扱い
原状回復は不要 そのまま残して退去できる 追加費用なし
原状回復が必要 手すりを撤去し、壁を補修する 撤去費用は自己負担(介護保険の対象外)
条件の記載なし 退去時に争いになる可能性がある 予測できない

撤去費用は介護保険の対象になりません。 手すり1本の撤去と壁の補修で数千円〜数万円かかります。工事する箇所が多ければ、退去時に十万円単位の負担になることもあります。

承諾を得る段階で「原状回復を求めるかどうか」を書面に残してください。3つ目の「記載なし」がもっとも危険です。

大家に断られにくい伝え方

所有者側の懸念は、たいてい次の3つです。

所有者の懸念 伝えられること
建物が傷むのではないか 手すりは下地に固定する工事で、構造には影響しない
退去時に困るのではないか 原状回復するか、残すかを事前に決めておける
費用を負担させられるのではないか 費用は入居者が負担する(所有者の負担はない)

残す方向で交渉できる場合は、その旨を伝える価値があります。 バリアフリー化された物件は、高齢の入居希望者にとって選ばれる理由になります。所有者にとってメリットになる可能性がある、という説明は成立します。

ただし、これはあくまで交渉です。 断られることもあります。断られた場合の代替手段は後述します。

UR賃貸・公社住宅・公営住宅の場合

公的な賃貸住宅は、民間とは手続きが違います。

種別 手続きの相手 特徴
UR賃貸住宅 都市再生機構(UR) 独自の申請様式がある。窓口に相談してから進める
公社住宅 各都道府県の住宅供給公社 事業主体ごとに手続きが異なる
公営住宅(都営・市営など) 管理する自治体 自治体側が改修を実施する制度がある場合も

公営住宅で注目したいのは、自治体が改修工事そのものを実施する制度を持っている場合があることです。この場合、介護保険の住宅改修を使わずに手すりが設置されることがあり、20万円の枠を消費しません。

住宅の管理担当課と介護保険担当課は別部署です。両方に確認してください。 片方だけに聞くと、使える制度を取りこぼします。

分譲マンション:専有部と共用部の境界

分譲マンションでは、「どこまでが自分の持ち物か」が問題になります。

図:分譲マンションの境界 ── 玄関扉がもっとも判断が分かれる

専有部(工事しやすい)室内の壁・床・建具浴室・トイレの内部室内の扉(トイレ・居室)玄関扉の内側の室内※配管の位置には制約がある管理規約の範囲内で可能共用部(管理組合の承認が必要)玄関扉そのもの玄関の外・外廊下外階段・エントランスバルコニー(工事は原則不可)※理事会の承認に1か月以上個人の判断では工事できない 専有部(工事しやすい)室内の壁・床・建具浴室・トイレの内部室内の扉(トイレ・居室)玄関扉の内側の室内※配管の位置には制約がある管理規約の範囲内で可能共用部(管理組合の承認が必要)玄関扉そのもの玄関の外・外廊下外階段・エントランスバルコニー(工事は原則不可)※理事会の承認に1か月以上個人の判断では工事できない
「引き戸等への扉の取り替え」は介護保険の対象工事ですが、玄関扉は共用部として扱われることが多く、外観の統一性の観点から交換できないことがあります。室内の建具は専有部なので交換できます。
場所 一般的な区分 工事の可否
玄関扉の内側(室内) 専有部 管理規約の範囲内で可能
室内の壁・床・建具 専有部 可能
浴室・トイレの内部 専有部 可能(ただし配管の制約あり)
玄関扉そのもの 共用部とされることが多い 管理組合の承認が必要
玄関の外・外廊下 共用部 管理組合の承認が必要
外階段・エントランス 共用部 管理組合の承認が必要
バルコニー 専用使用権のある共用部 工事は原則不可

もっとも判断が分かれるのが玄関扉です。 「引き戸等への扉の取り替え」は介護保険の対象工事ですが、玄関扉は共用部として扱われることが多く、個人の判断で交換できません。マンションの外観の統一性に関わるためです。

一方、室内の建具(トイレの扉・居室の扉)は専有部であることが一般的で、こちらは引き戸への交換ができます。

管理規約と図面を、業者に見せる

現地調査だけで判断すると、着工後に「できません」となることがあります。

  • 管理規約(工事の可否・届出の要否・工事可能時間帯)
  • 使用細則(リフォームに関する細則が別にある場合)
  • 竣工図面(配管の位置・床の構造)

この3点を業者に確認してもらってください。とくに床のかさ上げは、階下への遮音性能の基準が規約で定められている場合があり、それに適合する工法が必要になります。

管理組合への届出が必要な工事は、承認までに時間がかかります。 理事会が月1回しか開かれない管理組合では、承認だけで1か月以上かかることがあります。介護保険の事前申請とあわせると、着工までに2か月近く見ておく必要があります。退院に間に合わせたい場合は、この時間を逆算してください。

名義が本人でない場合の扱い

「親の家に子が住んでいる」「子が買った家に親が住んでいる」といったケースです。

介護保険の住宅改修で問われるのは、名義よりも居住の実態です。

条件 判定
介護保険被保険者証の住所と工事する住宅が一致している 要件を満たす
実際にそこで生活している 要件を満たす
名義が本人以外 所有者の承諾書が必要
住民票だけ移していて実際は別居 要件を満たさない

住所の不一致は、修正に時間がかかります。 住民票の異動が必要になると1か月近くかかることもあり、工事の計画が崩れます。相談の初期段階で被保険者証の住所を確認してください。

なお、二世帯住宅で親世帯と子世帯が別の建物として登記されている場合など、判断が分かれるケースがあります。窓口で確認してください。

工事ができない場合の代替手段

承諾が得られない、規約で制限されている、そもそも短期の入居予定である。こうした場合は、工事をしない方法に切り替えます。

図:承諾が不要で、20万円の枠も消費しない手段

0円2千円4千円6千円8千円10千円据え置き型手すり(貸与)月数百円〜突っ張り式手すり(貸与)月数百円〜置くだけスロープ(貸与)月数百円〜すのこ(浴室の段差解消)数千円〜浴槽用手すり(販売・1〜3割)購入費の1〜3割補高便座(販売・1〜3割)購入費の1〜3割 0円2千円4千円6千円8千円10千円据え置き型手すり(貸与)月数百円〜突っ張り式手すり(貸与)月数百円〜置くだけスロープ(貸与)月数百円〜すのこ(浴室の段差解消)数千円〜浴槽用手すり(販売・1〜3割)購入費の1〜3割補高便座(販売・1〜3割)購入費の1〜3割
いずれも壁に穴を開けないため所有者の承諾が不要で、退去時は返却するだけです。賃貸ではこちらが主軸になることも珍しくありません。
用具 制度 費用の目安 壁への固定
据え置き型手すり(重量で自立) 福祉用具貸与 月数百円〜 不要
突っ張り式手すり(床と天井で固定) 福祉用具貸与 月数百円〜 不要
浴槽用手すり(浴槽の縁に挟む) 特定福祉用具販売 購入費の1〜3割 不要
置くだけのスロープ 福祉用具貸与 月数百円〜 不要
すのこ(浴室の段差解消) 福祉用具貸与または購入 数千円〜 不要
補高便座 特定福祉用具販売 購入費の1〜3割 不要
ポータブルトイレ 特定福祉用具販売 購入費の1〜3割 不要

これらはすべて承諾が不要で、20万円の枠も消費しません。 退去時にも返却するだけです。

賃貸で暮らす場合、工事よりもこちらが主軸になることは珍しくありません。「工事ができないから何もできない」ではなく、「工事以外の手段が一通りある」と考えてください。用具の詳細は対象外になる工事の記事で整理しています。

据え置き型・突っ張り式の注意点

工事を伴わない手すりにも、向き不向きがあります。

  • 据え置き型は重量で自立するため、床が畳やクッションフロアだと沈むことがある
  • 突っ張り式は天井の下地が必要で、天井が弱いと固定できない
  • いずれも設置面積を取るため、狭い廊下やトイレでは通行の妨げになることがある
  • 体重を強くかける動作(立ち上がり)には、固定式のほうが安定する

福祉用具専門相談員に実際の場所を見てもらってから選ぶのが確実です。

賃貸で進めるときの順番

  • 介護保険被保険者証の住所と、住んでいる住宅が一致しているか確認する
  • ケアマネジャーに相談し、工事が必要か・用具で足りるかを見てもらう
  • 市区町村の窓口で承諾書の様式を入手する
  • 工事の内容・箇所を具体的に書き込む
  • 原状回復の条件を明記して所有者に渡す
  • 承諾を得たら、事前申請の書類一式に添付する
  • (分譲マンションの場合)管理規約と図面を業者に確認してもらう
  • (共用部が絡む場合)管理組合の承認スケジュールを確認する
  • 承認後に着工する

図:賃貸で進めるときは、承諾書を先に当たる

1被保険者証の住所と住んでいる住宅が一致しているか確認不一致なら住民票の異動に1か月近くかかることも最初2ケアマネジャーに相談(工事が必要か、用具で足りるか)用具で足りるなら承諾は不要になる3市区町村で承諾書の様式を入手し、内容を具体的に記入原状回復の条件を明記してから所有者に渡す最重要4(分譲の場合)管理規約と図面を業者に確認してもらう共用部が絡むなら管理組合の承認スケジュールも5承諾を得てから事前申請 → 承認 → 着工承諾書は申請書類の一部。後回しにできない 1被保険者証の住所と住んでいる住宅が一致しているか確認不一致なら住民票の異動に1か月近くかかることも最初2ケアマネジャーに相談(工事が必要か、用具で足りるか)用具で足りるなら承諾は不要になる3市区町村で承諾書の様式を入手し、内容を具体的に記入原状回復の条件を明記してから所有者に渡す最重要4(分譲の場合)管理規約と図面を業者に確認してもらう共用部が絡むなら管理組合の承認スケジュールも5承諾を得てから事前申請 → 承認 → 着工承諾書は申請書類の一部。後回しにできない
承諾書の取得を書類の最後に回さないでください。断られる可能性があるため、早めに当たっておけば福祉用具へ切り替える時間が残ります。

承諾書の取得を、書類の最後に回さないでください。 所有者の判断に時間がかかることも、断られることもあります。早い段階で当たっておけば、断られた場合に用具へ切り替える時間が残ります。

所有者への依頼文の書き方(そのまま使える文面)

承諾書の様式だけを渡しても、所有者は判断できません。何をするのか、誰が払うのか、退去時にどうなるのかが分かる添え状を1枚つけると、話が早く進みます。

次の文面をそのまま使えます。角括弧の部分を書き換えてください。

〔物件名・部屋番号〕にお住まいの〔入居者名〕の家族です。いつもお世話になっております。

このたび〔入居者名〕が介護保険の要介護認定を受け、担当のケアマネジャーから住宅内の安全対策をすすめられました。つきましては、下記の工事について承諾をいただけないかご相談させていただきたく、ご連絡いたしました。

工事の内容 ・浴室内の壁に横手すり1本(長さ60cm) ・浴室の洗い場の壁に縦手すり1本(長さ60cm) ・トイレの壁にL字型手すり1本

いずれも壁の下地に固定するもので、建物の構造に影響する工事ではありません。施工は〔業者名〕が行い、工事は半日程度で完了します。

費用の負担 工事費は全額こちらで負担いたします。介護保険の住宅改修費の支給を申請するため、大家様のご負担は発生しません。

退去時の取り扱い 原状回復(手すりの撤去と壁の補修)について、ご希望をお聞かせください。撤去が必要な場合は、こちらの負担で対応いたします。手すりを残してよろしければ、そのままにいたします。

お願いしたいこと 市区町村の様式による承諾書へのご署名をお願いできますでしょうか。工事の申請には事前の承諾書が必要とされており、着工前に提出する必要があります。

ご不明な点がありましたら、いつでもご連絡ください。現地をご確認いただくことも可能です。

この文面のポイントは3つです。

  1. 構造に影響しない工事であることを明記する(所有者の第一の懸念)
  2. 費用負担がないことを先に書く(第二の懸念)
  3. 原状回復を「こちらで対応する」と書いて選択を委ねる(判断のハードルを下げる)

「残してよいか」を所有者に選ばせる形にすると、残す方向で了解が得られることがあります。撤去費用が発生しないぶん、こちらの負担も軽くなります。

管理会社を通す物件の場合は、まず管理会社に相談してください。管理会社が大家に取り次ぐ流れになるため、直接大家に連絡すると混乱することがあります。

これから住み替える場合に見ておく点

すでに住んでいる家ではなく、これから高齢期の住まいを選ぶ段階なら、工事を前提にしないほうが選択肢が広がります。

内見のときに次を確認してください。

確認する場所 見るポイント 工事が必要になりやすいサイン
玄関 上がり框の高さ 30cm以上ある
玄関 靴の脱ぎ履きに使える腰掛けスペース まったく余地がない
廊下 幅(メジャーで測る) 78cm未満(歩行器が通りにくい)
廊下・居室 敷居の段差 2cm以上ある
トイレ 広さ 0.4坪(80×120cm)以下
トイレ 扉の開き勝手 内開き(中で倒れると開けられない)
浴室 広さ 0.75坪(1216)以下
浴室 浴槽の縁の高さ 60cm以上(またぎにくい)
浴室 入口の段差 10cm以上ある
全体 壁の下地 石こうボードだけの壁が多い
全体 照明の明るさ 廊下・階段が暗い

トイレの扉が内開きかどうかは、内見で必ず見てください。 中で倒れたときに扉が体につかえて開けられなくなるためです。分譲マンションでは室内の建具なので交換できますが、8万〜20万円かかります。最初から引き戸や外開きの物件を選べれば、この費用が要りません。

廊下幅はメジャーで実測してください。図面の寸法は壁の芯から芯までを指すことがあり、実際に通れる幅はそれより狭くなります。

壁の下地は内見では分かりません。 ただし、壁を軽く叩いたときの音で見当はつきます。詰まった音がすれば下地があり、軽く響く音がすれば石こうボードだけの可能性があります。石こうボードだけの壁に手すりを付けるには補強板を入れる工事が加わり、1か所あたり1万〜3万円の加算になります。詳しくは手すり取り付けの記事にまとめています。

施設待ちなど、短期入居の場合の考え方

特別養護老人ホームの入所待ちなど、数か月から1年程度の居住が見込まれる場合の判断です。

判断軸 工事が向く 用具が向く
居住期間 2年以上見込める 1年未満の可能性がある
身体状況 安定している 変化が続いている
承諾 得られている 得にくい/時間がかかる
20万円の枠 使い切っていない 次の住まいで使いたい

短期入居では、原則として用具を選ぶほうが合理的です。 理由は2つあります。

  1. 工事は元に戻せず、退去時に撤去費用が発生する可能性がある
  2. 20万円の枠を使ってしまうと、転居先で使える枠が減る(ただし転居はリセットの対象になります)

2点目については補足が必要です。転居した場合、住宅改修の20万円の枠は新たに設定されます(回数の制限はありません)。つまり短期入居先で枠を使っても、転居後にまた20万円分使えます。この点はリセットの記事で整理しています。

したがって「枠がもったいない」という理由だけで工事を避ける必要はありません。判断の軸は、撤去費用と身体状況の変化です。ケアマネジャーに居住期間の見込みを伝えて相談してください。

まとめ

賃貸・分譲マンションの介護リフォームで押さえるべき点は4つです。

  1. 賃貸でも介護保険の住宅改修は使える(持ち家限定ではない)
  2. 所有者の承諾書が必要で、口頭では足りない(申請書類の一部)
  3. 原状回復の条件を書面で確認する(撤去費用は介護保険の対象外)
  4. 工事ができなくても、承諾不要の用具が一通りある(枠も消費しない)

分譲マンションの共用部が絡む場合は、管理組合の承認に1か月以上かかることを見込んでください。

制度の運用は市区町村によって細部が異なり、管理規約は物件ごとに異なります。実際の判断にあたっては、担当のケアマネジャー、お住まいの市区町村の介護保険窓口、および管理会社・管理組合にご確認ください。

よくある質問

賃貸住宅でも介護保険の住宅改修は使えますか?
使えます。介護保険の住宅改修は持ち家に限定されていません。ただし所有者(大家・管理会社)の承諾が必要で、承諾書は申請書類の一部として提出を求められます。口頭の了解だけでは申請が受け付けられないことがあります。
承諾書はどうやってもらえばよいですか?
市区町村の窓口で様式が用意されていることが多いので、まずそれを入手してください。所有者に記入・署名を依頼します。工事の内容・箇所・原状回復の扱いを明記した状態で渡すと、判断してもらいやすくなります。
退去するときに元に戻す必要がありますか?
承諾の条件によります。原状回復を求められる場合は撤去費用が発生します。この費用は介護保険の対象外なので、承諾を得る段階で「原状回復は不要」と書面で確認できると負担が読めます。判断が分かれるところなので、必ず書面に残してください。
大家が工事を嫌がる場合はどうすればよいですか?
工事をしない選択肢に切り替えるのが現実的です。据え置き型の手すりや突っ張り式の手すり、置くだけのスロープは福祉用具貸与で使え、壁に穴を開けないため承諾が不要です。20万円の枠も消費しません。
分譲マンションの廊下や階段に手すりを付けられますか?
共用部にあたるため、個人の判断では工事できません。管理組合の承認が必要です。一方、玄関扉の内側は専有部であることが多く、こちらは管理規約の範囲内で工事できます。境界は規約によって異なるため確認が必要です。
親の家に子が住んでいて名義が親の場合はどうなりますか?
工事する住宅の住所が、介護保険被保険者証に記載された住所と一致している必要があります。名義そのものよりも「本人がそこに住んでいるか」が要件です。名義が本人以外であれば所有者の承諾書が必要になります。
サービス付き高齢者向け住宅やグループホームでは使えますか?
施設の類型によります。住民票を移して居住している賃貸住宅であれば対象になる場合がありますが、施設サービスに含まれる住居では対象外になることが一般的です。判断が分かれるため、契約前に市区町村の窓口に確認してください。

この記事の作り方

制度の記述の確認日
2026年8月19日(厚生労働省の通知および下記の一次情報を参照)
この記事で扱っていないこと
  • 個別の管理規約の解釈
  • 大家・管理組合との交渉の代行
  • 特定の物件が工事可能かどうかの判断
立場
当サイトは施工を行いません。特定の業者を有利に扱う理由がないため、 工事を減らす選択肢(福祉用具・照明の改善など)も同じ比重で扱っています。 誤りのご指摘はお問い合わせから受け付け、修正時は更新日を改めます。

参考にした一次情報

  1. 厚生労働省「介護保険における住宅改修」
  2. 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」
  3. 各市区町村が公開する居宅介護(介護予防)住宅改修費支給申請の様式(所有者承諾書)

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